日本サウンドスケープ協会 2025年度 秋季研究発表会
- Prof. T.Imada's Office

- 11月25日
- 読了時間: 3分
日本サウンドスケープ協会2025年度秋季研究発表会の一般報告セッションにて、今田匡彦が登壇いたします。オンライン会議への一般参加は下記URLからお申込みいただけます。
開催概要
開催日時:2025年11月30日(日)13:30~15:15
開催形式:オンライン(Zoom)
参加費:無料
(11月27日締切)
今田匡彦/サウンドスケープと対話的理性によるポスト・ポスト構造主義的音楽教育
本発表は,子どもの「対話的理性(communicative rationality)」に基づくポスト=ポスト構造主義的音楽教育の枠組みを提案するものである。まず,西洋近代の科学的啓蒙思想がもたらした「合理化」と「対象化」の傾向が,いかに音楽教育を歪めてきたかを問い直し,そこからの回復の可能性を探る。デリダ,フーコー,ドゥルーズらによって展開されたポスト構造主義は,音楽・権力・カリキュラムに関する支配的言説を解体する上で重要な理論的役割を果たしたが,教育実践においては建設的な代案を欠いていたといえる。本発表で提示するポスト=ポスト構造主義的視点は,この欠落を補うものであり,「大きな物語」への回帰ではなく,状況に根ざした文脈の中で子どもとともに音楽的意味を共創する,対話的で暫定的な志向をもつ。教育的実践のモデルとして,R・マリー・シェーファーのサウンドスケープ思想およびサウンド・エデュケーションを分析する。シェーファーによるサウンド・エデュケーションは,音環境を通した子どもの聴覚体験環境,個々人の固有体験基盤とした協働的創造性を具現するオルタナティヴな実践と考えることができる。とりわけ重要なのは,子ども自身の音楽的創造,教室という音響的環境の中から,これまで聴いたことのない音を生み出し,他者の評価を必ずしも必要としない独自の音楽的経験への道を開く点である。この意味で,シェーファーのサウンド・エデュケーションは,従来の音楽室を子どもたちによる新たなオンガクを実践する生成的な場として変容させるものである。本発表では,シェーファーのサウンド・エデュケーションをフランクフルト学派第二世代のユルゲン・ハーバーマスによる対話的理性:communicative rationalityと統合することによって,子どもの創造性を肯定し,オンガクを生活世界に結びつけ,音楽教育を生態学的かつ多文化的文脈に位置づける理論的枠組みを提示する。最終的に,ポスト=ポスト構造主義的音楽教育は,単なる「脱構築」を越えた建設的な方向性を示し,音楽を「対話的」「生成的」かつ「共有された音環境への倫理的感受性をもつ営み」として再構想するものである。 キーワード:サウンドスケープ、サウンド・エデュケーション、フランクフルト学派、生活世界、対話的理性







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